「シュレーディンガーの宇宙」
久しぶりにハードSF小説を読んだ。
実は最近のマイブームが「パラレルワールド」で、先日これをキーワードに色々調べていたら、この本に巡りあったのだ。
パラレルワールドとは、量子力学的な考え方から導き出される一つの仮説である。正直、量子力学そのものは難しくて、私はほとんど理解していないのだが、思い切りざっくり言えば、量子力学的にはある粒子がAという場所に存在するのか、Bという場所に存在するのかというと、それはどちらとも言えず、Aに存在する可能性もあり、Bに存在する可能性もあり、存在というのは確率的なものということになるらしい。
こういう実験が考えられた。まず、哀れな実験台として猫に箱に入ってもらう。
そして、上の例で言えばある粒子がAの場所にあったら箱の中に毒ガスが出て、猫は死ぬ。ある粒子がBの場所にあったら毒ガスは出ないので猫は生きている。
もし、粒子がAにある可能性もあり、同時にBにある可能性もあったとしたら、生きているか死んでいるかは二つに一つのはずなのに、猫は「生きているかも」「死んでいるかも」という複数の状態として同時に存在していることになってしまう。
これが量子力学の世界で有名な「シュレーディンガーの猫」という思考実験だ。
しかし猫はやっぱり生きているか、死んでいるかのどっちかであるはずなので、そこで「多世界解釈」というものが生まれた。
つまり、「猫が生きている世界」と「猫が死んでいる世界」は重なりあって両方存在しているという、とんでもない考え方だ。それがパラレルワールドだ。
そこで冒頭のSF小説の話に戻るのだが、この小説の中には、上のような量子力学的な話が存分に出てきて、その結果として、地球で核戦争の起きた世界と、核戦争の起きなかった世界があり、その間で人が行き来してしまったというような話だ。
私がハードSFが好きなのは、最新科学のエッセンスを上手に解き明かしてくれて、その上に架空の話を付け足して盛り上げてくれるところだ。上手く出来たハードSFの話は、最後は絶対に現実にはあり得ない空想の話になっていることは分かるのだけれど、本当のところと嘘のところが、上手く繋げられていて、どこからが嘘なのかが分からないようになっている。
読んでいると、どんどんワクワクしてくる。そんなSFが好きなのだ。
この「シュレーディンガーの宇宙」で、私は久しぶりに、そんなハードSFの「ワクワク」に出会った。細かいところでは、ちょっと描写が分かりにくかったり、小説としては荒削りなところがあるなと感じたのだけれど、著者のプロフィールを見たら、なんとこの人は小説家ではなくて、ソーシャルメディア広告代理店の社長さんだった。ビックリである。
ということで、「パラレルワールド」が今の私のマイブームなので、またこの関係のネタが今後出てくると思われます。
- 作者: 島青志
- 出版社/メーカー: 株式会社SALT
- 発売日: 2013/01/01
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る