雪深い東北で教わった温かい寝方
つまり、毛布は掛け布団の下ではなくて、敷布団の上に敷くのが温かい寝方だということだ。
実は私は、これ、知っていた。
それも40年近く前に。
まだ春浅い3月初旬、大学生だった私はユースホステルを使って東北を一人旅していた。
秋田から角館線という、盲腸のような第三セクター鉄道に乗って、松葉という終着駅近くのユースホステルに泊まった。
民家そのものといった風情のユースホステルに着いたら、宿主のおばさんが「遅かったから心配したよ」と言って迎えてくれた。
日に何本かしか到着しない列車だ。客が来る時間は決まっているのだろう。私は、駅からの道すがら、写真を撮ったりしながらのんびりと歩いていたので遅くなったのだ。
夕食はきりたんぽ鍋。美味しかった。
そして夜寝る時、おばさんは布団の敷き方を教えてくれた。
毛布は下に敷きなさい。その方が温かいんだからと。
この夜は、本当にそうして寝たのか、それが本当に温かかったのか、もはや記憶にはない。
今現在の私は、どうしても上に掛ける布団の重さがないと安心しないのだ。
でも、おそらく、彼の地では今でもそうやって人々は寝ているのだと思う。
はるか昔の、まだ雪深い東北の山間の村の一夜を、ふと思い出したのであった。