一生の中の数少ない本当に幸せだった一瞬

一生の中で、心から幸せだったと思えるのは、瞬間的なもので、何度もないんじゃないだろうか。

私がそれで思い浮かぶのは、大学時代にハワイアンバンドをやっていた時。

伊東温泉のあるホテルで、10日ほど滞在しながらビアガーデンで演奏するというバイトをしたことがある。

そのある夜、ステージの出番も終わって、一杯飲んだ後の深夜、練習場になっていたホテルのバーに三々五々集まったメンバーで、演奏し始めた時。

今でも憶えている。

あんなにリラックスして演奏して、皆の音が融け合って、自分でも本当に良い音が出せていた一瞬があった。

皆で演奏することはいくらでもあったし、今でもバンドをやってはいるけれど、あのホテルのバーの夜の演奏は、今でも自分の生涯のベストだったと思える。

その時いたメンバーしか聴いていない演奏だし、今はそれを憶えているのも私だけかも知れないけれど、あの時の演奏が、その後40年近く経った今でも、音楽が好きでいられるきっかきになったと思えるのだ。

一生の中で、幸せだったということ。それはやっぱり、一瞬なのじゃないだろうか。