「幻の光」デビュー作にして完成していた是枝ワールド

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鬼才、是枝裕和監督の監督デビュー作であり、主演の江角マキコの映画デビュー作でもあるという。

既に是枝監督の映画は好きで何本も見させて頂いているのだが、それらを先に見ていたからこそ、是枝監督がデビュー当時から醸し出していたこの味わいを楽しめたかも知れない。

例によって、普通の映画ではない。

長回しでの風景の描写。

登場人物たちは、かなり遠くからのカメラで捉えられ、動きの少ない背景が相まって、まるで静止画の中の点景のようだ。

悲しいできごとを過去に抱えた主人公の心象は、モノトーンに近い風景や、静かな間で描かれる。

こんなに、俳優の表情をクローズアップで捉えない映画は珍しいだろう。俳優の演技に頼らず、それ以外の周囲の描写で描いてこそ映画だと、是枝監督は主張していたのだろうか。

おそらく、そんな気概はあっただろうが、若気の至りかちょっとやり過ぎな感じもしないではない。

でも、これだけ静かで動きがない映画でありながら、序盤から完全に見る側は惹きつけられ、見た後にも鮮烈な余韻を残す。

やはり、鬼才の片鱗、どころか、是枝ワールドは、デビュー作にしてかなり完成されていたと思う。

もうひとつ、この映画を見たら、海の近くの家に住みたくなった。


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