残業を減らすためならいくらでも金をかけるという会社

今の時代、どこの企業でも頭の痛い問題の一つに「残業」がある。家計を助けるために、「おとうさん、頑張って残業たくさんするからね!」という時代は終わった。そして、社員が滅私奉公で違法なサービス残業をすることを放置する企業は、淘汰される時代になった。

だから、いかに残業を減らすかは、企業の大きな課題だ。

社員の残業を防ぐ仕組み 社長も社員も時間に追われる会社に足りないモノ【8】:PRESIDENT Online - プレジデント

この記事には、その残業についてとても示唆に富んだことがいくつか書かれてあった。

同じ仕事をして、定時に帰る人と残業する人がいるなら、定時に帰る人のほうが能力が高い。それなのに能力のない人が残業代を稼ぐのでは、頑張って時間内に仕事を終わらせる人がやる気を失います。

その通りだ。ただ問題は、ほんとに「同じ仕事」であると言えるかどうか。社内には色々な仕事があって、その状況も難易度も違うだろう。それらの人を皆ひっくるめて、定時に帰る人の方が能力が高いと言い切れるのか? 少なくともうちの会社ではそう簡単には言い切れない。

でも我が社では残業が多い人は給料は高くなるが評価が下がるから、賞与が少なくなる。一方残業せずに帰った人は、評価が上がるから給料が少なくても賞与が多くなる。最終的には、後者のほうが金額が多くなるようにしています。

そのように設定するのは、確かに残業を減らす方向に社員のモチベーションを持っていくのに有効な手段だろう。上に書いたような問題も生じるかも知れないけれど、そうした問題を乗り越えてでも「残業を減らすんだ!」という会社の強い意思を示すことになるから。

だがこの社長が素晴らしいのは、残業を減らすために、ただ単に社員に「残業を減らせ!」と言ったり、報酬の上げ下げだけで残業を減らさせようとしているのではないところだ。ちゃんと、残業を減らすための方策を打っている。それは、徹底したIT化で、そのために金を惜しまなかった。

「残業をするな」と言っても残業は減らないが、その仕事をなくしたら、残業することはできません。だから仕事をなくすことが大事です。

何ごともそうだけれど、金をかけるということは、エネルギーなのだと思う。掛け声だけ大きくても、そのことのためにお金をかけないとエネルギーが動かないから、社員の心が動かないのではないか。

この社長は、実際にIT化による合理化で仕事を減らしたのだろうけれど、それだけではないと思う。必要なお金を使ったからこそ、それがエネルギーとして社員に伝わったんじゃないか。

残業を減らすというのは、これからの時代、企業にとって、単にコストを減らすということではなく、企業の生き方そのものだ。だから残業を減らすために使うお金は、コストではなく投資なのだと思う。